近年、日本では地震や豪雨などの自然災害が頻発し、「BCP(事業継続計画)」という言葉を耳にする機会も増えてきました。しかし、中小企業におけるBCPの策定率はまだ高いとは言えず、多くの企業が「必要性は感じているが、まだ取り組めていない」という状況にあります。

一方で、BCPは単なる災害対策ではありません。実はBCPには、企業経営そのものを強くする大きな汎用性があります。

〈BCPは「企業を止めないための経営戦略」〉
BCPというと、多くの方が「地震や台風に備える計画」と考えがちです。もちろんそれも重要ですが、BCPの本質は企業活動を止めないための仕組みづくりにあります。
企業活動を止めるリスクは、自然災害だけではありません。

例えば
・経営者の突然の事故や病気・サイバー攻撃・感染症の流行・サプライチェーンの停止・原材料価格の高騰
など、企業経営には様々なリスクが存在します。

最近では、中東情勢の緊張により原油価格の高騰や供給の停滞が懸念されています。原油は燃料としてだけでなく、プラスチック製品や包装資材など多くの製品の原料でもあるため、供給が滞れば製造業を中心に広範な影響が出ます。
つまりBCPとは、こうした経営リスクに備えるための総合的な考え方なのです。

〈BCPの視点が企業経営を強くする〉
BCPの考え方は、日常の経営判断にも活かすことができます。
例えば、多くの企業が採用している「ジャストインタイム方式」。これは在庫を極力持たず、必要な時に必要な分だけ仕入れることで効率化を図る仕組みです。コスト削減の面では非常に優れた方法ですが、サプライチェーンが止まった場合には大きなリスクにもなります。
実際にBCPの観点からリスクを見直した企業の中には、「自然災害による供給停止」を想定し、あえて在庫量を少し増やすという判断をした企業もあります。
この判断は本来、災害対策として行われたものですが、結果として現在のような国際情勢やパンデミックによる原材料供給の停滞にも対応できる体制につながっています。
このようにBCPは、企業のリスクを見える化し、経営判断の質を高めるツールでもあるのです。

〈「作るだけBCP」が多いという現実〉
一方で、BCPを策定した企業でも、実際には十分に活用されていないケースが少なくありません。

よくあるのが
・作っただけで終わっている・社内で共有されていない・訓練を実施していない
という状態です。

BCPは文書を作ることが目的ではなく、実際に機能することが重要です。そのためには、定期的な見直しや訓練を通じて、社員全員が「いざという時にどう動くか」を理解している必要があります。

〈災害現場で見てきた企業の違い〉
前回のコラムでも書きましたが、私はこれまで保険会社で20年以上にわたり、多くの災害現場に関わってきました。そこで強く感じたのは、「準備をしていた企業」と「していなかった企業」では、復旧のスピードが大きく異なるということです。

また、100社以上のBCP策定支援に携わってきましたが、BCPに真剣に取り組んでいる企業ほど、結果として経営基盤が強くなっていると感じています。
それはBCPが単なる防災対策ではなく、企業のリスクを整理し、経営を強くする仕組みだからです。

〈BCPは「未来への備え」〉
自然災害、国際情勢、感染症、サイバーリスクなど、企業を取り巻く環境は年々不確実性を増しています。
そのような時代だからこそ、BCPを「防災のための書類」としてではなく、企業の未来を守る経営ツールとして活用することが重要です。

「想定外だった」と事業が停止する企業がいる一方で、「想定していてよかった」と事業継続・早期復旧を果たす企業がいます。起こる前の平時に、経営者としてどちらを選択した方が良いでしょうか。

もし
・BCPを作ったが活用できていない・これからBCPに取り組みたい・自社に合った実践的なBCPを作りたい
とお考えの経営者の方がいらっしゃいましたら、ぜひお気軽にご相談ください。

BCPは企業の存続を守るだけでなく、経営そのものを強くする大きな可能性を持っています。